【Flyability事例】人が入れない下水管約450mを1日で調査 ― ELIOS 3のLiDARデータを更生工事の設計に活用 ―

2026/9/16

C&K Industrial Services社は、腐食・劣化により人の立ち入りが困難な下水管の調査に、屋内点検用ドローン「ELIOS 3」を活用しました。約450mに及ぶ管内の映像と3D LiDARデータをわずか1日で取得。安全な状態把握に加え、管径や形状を可視化・計測し、更生工事(ライニング)の設計・施工計画に活用した事例をご紹介します。

メリットの概要

安全性向上

ELIOS 3を活用することで、作業員は空気環境の悪い場所や数百メートルに及ぶ閉鎖空間といった高リスク環境へ立ち入ることなく、点検を実施することができました。

アクセス向上

クローラー型ロボットはパイプの管径の制約を受けやすく、180cmを超える大口径管では使用が困難です。一方、C&K Industrial Services社のELIOS 3を活用することで、直径8.2メートルに及ぶ大口径のパイプの点検や調査を実施しています。

効率化

ELIOS 3を活用することで、交通規制による影響を最小限に抑えられるほか、作業員が閉鎖空間へ立ち入る必要がないため安全対策の負担も軽減されます。また、点検に必要な人員を従来比で最大80%削減することが可能です。

データ品質向上

C&K Industrial Services社では、ELIOS3測量ペイロードの活用により、わずか2名・1日の作業で約450mに及ぶ区間の高精度な測量データを取得することに成功しました。

硫化水素(H₂S)は無色で可燃性を持つガスで、腐った卵のような強い臭いがなければ存在に気づくことは困難です。自然界に存在するガスですが、下水道や排水処理施設では高濃度で発生することがあります。この硫化水素は、下水道管理における大きな課題の一つです。有毒かつ腐食性の高い性質を持ち、比較的低濃度であっても長期間にわたり配管やトンネルを腐食・劣化させます。損傷が進行すると、最終的には構造物の崩壊につながる恐れもあります。こうした事態を防ぐため、下水道施設では定期的な点検や維持管理を実施するとともに、必要に応じて更生工事(ライニング)を行うことが不可欠です。

下水道の点検では、厳格な安全基準への対応が求められます。地下トンネルやマンホール、各種アクセス構造物への立ち入りには、作業員による閉鎖空間への進入、あるいは遠隔点検機器の活用が一般的です。作業員が立ち入る場合は、高性能な専用機器や安全設備が必要となるほか、適切な個人用保護具(PPE)を着用し、厳格な安全手順を遵守できる高度な訓練を受けた作業員によって実施されなければなりません。これらは、作業中の事故を防止し、安全かつ確実に点検データを取得するために不可欠です。

下水道点検で取得したデータは、米国のNASSCO(全米下水道サービス会社協会)規格をはじめとする、業界で広く認知・採用されているフォーマットで報告されるのが一般的です。ナイアガラの滝で実施された最近のプロジェクトでは、C&K Industrial ServicesがELIOS 3を活用し、厳しい環境下にある下水道の点検を実施しました。この現場では硫化水素濃度は比較的低かったものの、作業員が内部へ立ち入ることは推奨されない状況でした。そのため、同社はELIOS 3を用いてNASSCO基準に準拠した点検を実施し、安全を確保しながら必要な点検データを取得しました。

C&K Industrial Services社:複雑な点検のスペシャリスト

C&K Industrial Servicesは、産業、環境、インフラ分野の請負業者であり、様々な業界において複雑な建設・維持管理プロジェクトを手掛けています。100年にわたる実績を背景に、下水道や排水網関連のプロジェクトにおいて専門知識を活かし、パイプラインの容量や変形、音響検知の分析評価に加え、断面形状測定も行っています。プロジェクトの完了時には、設計基準を満たすデータを顧客に提供し、次の開発段階を推進する基盤を整えています。

C&K Industrial Servicesが業務において直面する最大の課題は安全の確保であり、下水道工事においては、特に狭小空間や交通関連の危険が挙げられます。同社のチームは、作業安全分析(JSA)を活用し、専任の安全・運営管理部門による監督を受けることで、各プロジェクトにおける作業の安全を確保しています。

同社は、安全基準の向上と、従来は到達不可能だった場所からのデータ収集を目的として、作業ツールキットにELIOS 3を導入しました。その結果、大口径の設備において、遠隔点検を安全かつ効率的に実施するための最適なソリューションであることが判明しました。

C&K Industrial Servicesのチームと共に、出動を待つELIOS 3

ELIOS 3を用いた、硫化水素による腐食を受けた下水管の点検

ナイアガラの滝近郊の現場において、AECOM社は現地水道局と協力し、地下の排水インフラの状態評価を行ってきました。ある現場では、腐食により構造が著しく劣化しているのではないかと懸念されていた直径1.2メートル、長さ457メートルの生活排水管について、包括的な目視およびデジタル検査の実施が目的とされていました。

この環境は、空気の質が悪く、狭小空間での作業となるため、リスクが高い環境です。また、トンネルの構造状態が不明であったため、人が立ち入ることは安全性の観点から事実上不可能でした。C&K Industrial Services社には、NASSCOの基準に準拠した距離マーカーを含む高解像度の視覚映像に加え、下水道のリライニング(別名スリップライニング修復)の計画策定を支援するための3D LiDARデータの提供が依頼されました。LiDARデータは、修復に適用可能な最大ライナー径を決定する上で極めて重要です。このデータは、交換設計の指針となり、最適な流量を回復させることにつながります。

C&K Industrial Services社が下水道マッピングにELIOS 3を採用した理由とは

C&K Industrial Services社は、作業員の安全を確保しつつ、必要な成果を確実に得られると確信していたため、この任務にELIOS 3を採用しました。ドローンを使用することで、狭小空間への立ち入りが不要になったほか、4Kカメラと搭載ライトにより、比類のない視認性と鮮明な画像が得られました。さらに、ELIOS 3の16,000ルーメンの照明装置であれば、直径8.2メートルもの広さのトンネルを照らすことができることも、採用の決め手となったのです。

ELIOS 3は、他手法では到達できない損傷箇所や危険な状況においても、そのアクセスを実現させます。クローラーの場合、安全に使用するためには安定したパイプラインと、事前に清掃された環境が必要ですが、今回のケースではそのような対応は不可能でした。一方、ELIOS 3は、パイプラインが崩落していたり、ずれが生じていたり、部分的に塞がれていたりする場合でも、内部を飛行し、自由に移動することができるのです。

ELIOS 3 を用いた腐食した下水管の点検

C&K Industrial Services 社は、洗浄(高圧洗浄や吸引によるゴミの除去)は行うことができないと判断し、CCTVクローラーを管内に投入できる状態にすることはできないため、ELIOS 3 のみを使用することとしました。管底の著しい劣化など全体的に脆弱な状態であったことも、クローラーや有人による進入など従来の方法を困難にさせていました。

点検チームは、ELIOS 3を飛行させるため、下水管を100メートル区間に分割しました。管路への出入りは隣接するマンホールを通じて行われ、そこから得られたデータは地上レーザースキャンと紐付けられ、最終的な点群データを整合させるために使用されました。この方法は正確なジオリファレンスに最適であり、AECOM社が要求する成果物に必要な精度を備えたLiDARによるデータ収集を可能にしました。操縦者は、損傷した管壁との接触を避けつつ、管内を完全に視認できるように、管底面近くでELIOS3を飛行させました。

管の最終区間(長さ126メートル)には下流へのアクセスがなく、行き止まりとなっていました。経験豊富なC&Kのパイロットは、それでもELIOS 3を管内で飛行させ、十分なデータを収集し、標準バッテリー1回の充電でドローンを戻すことに成功しました。その後、ELIOS 3のLiDARデータと地形の表面スキャンを組み合わせて、この区間にある埋設マンホールの位置を特定し、下流側の設備の位置を確認しました。

全体として、ELIOS 3によるデータ収集は1日で全てが完了。必要となる作業員がより少ない人数で良いこと、アクセスと結果取得の迅速になったこと、安全プロトコルの簡素化を考慮すると、ELIOS 3の導入により業務効率が最大80%向上したと、C&K Industrial Services社は結論付けています。

ELIOS 3は、トンネルのLiDARスキャン(左)と、人がアクセスできない暗い場所を照らすLEDライトで4K映像を同時に取得

ELIOS 3ソリューションによるNASSCO準拠の結果

NASSCO準拠の報告書を作成するには、検査員は視覚的なデータと、パイプの入口からの位置関係を示す必要があります。例えば、あるひび割れの写真について、それがパイプ内部の5メートル地点にあることを示さなければなりません。 これを実現するため、C&K Industrial Services社のチームは、ELIOS 3のデータをFlyability社の専用ソフトウェア「Inspector」にアップロード。そこで初期レビューを行い、そのデータが必要な条件を完全にカバーしていることが確認できたのです。

その後、動画と同期された距離データを、NASSCO準拠の点検ソフトウェア「Pioneer」にエクスポートしました。このソフトウェアは、パイプラインのセグメントを分割し、PACP規格に従って欠陥をコード化します。チームはこのソフトウェアを使用して、NASSCOレポートを作成しました。

LiDARデータは、.las形式の点群ファイルとして、ELIOS 3のLiDAR測量ペイロードのパートナーソフトウェアであるFARO Connectにエクスポートされました。FARO Connectを使用して各パイプライン区間の完全な3D形状を可視化し、さらにLeicaの点群ソフトウェアでデータを処理して、高解像度の3Dモデルとレポートを作成しました。

最終的に、C&K社はパイプラインの詳細な1メートル間隔のセグメントデータを作成しました。これにより、エンジニアが劣化箇所を明確に可視化し、下水道システム全体にわたる正確な寸法測定が実現。ライニング改修計画の策定に活用されることになります。

ELIOS 3による下水道点検の意義

C&K Industrial Services社はこの案件を完了させ、AECOM社から要請されていた視覚データおよびLiDARデータを提供しました。ELIOS 3の導入によって作業員の狭小空間への立ち入りが不要となり、アクセス面および構造上の制約を克服することができました。同社が提供した高品質なデータは、技術的な意思決定の根拠となるほどに詳細であり、NASSCO規格にも準拠しています。ドローンを活用したことで、データ収集にかかる時間を短縮し、下水道周辺の交通や通行への影響を最小限に抑えることができました。

一般的に、C&K Industrial Services社は、ELIOS 3のようなドローンベースのソリューションを、高性能なソフトウェア(本案件ではInspector、SewerAI社のPioneer、FARO Connect、Leica)と組み合わせることで、安全性を向上させ、点検コスト全体を削減しながら、より高品質な点検データを提供できるようになったと実感しています。これにより、同社は従来のクローラー式検査機を使用する競合他社との差別化を図り、他の技術では到底到達できない設備へのアクセスを実現しています。

■出典:Flyability社,
Surveying 450 Meters of Damaged Sewers in 1 Day at Niagara Falls
https://www.flyability.com/casestudies/sewer-relining-survey

ブルーイノベーション株式会社
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