2030 年、ブルーイノベーションの「クラウドモビリティ構想」が自律分散型社会を支える|後編|
2023/2/2
取締役 熊田 雅之
空飛ぶクルマや輸送ドローンが活躍し、ロボットが社会の隅々まで人々の暮らしを支える社会は、もう間近に迫っています。ドローンやロボット、モビリティなどがリモート(遠隔) で繋がり、人工知能(AI) で安全に、かつ確実に制御管理されている社会インフラのベースには共通プラットフォームが必要となります。ブルーイノベーションは、全てのモビリティがBEP で創られたグリッド空間と繋がり、グリッド内の情報がリアルタイムで取得でき、結果として時々刻々と変化する最適なルートを提供していく次世代モビリティ社会「クラウドモビリティ構想」の実現に向けて取り組んでいます。
クラウドモビリティ構想の実現に向けて
私たちは、自律的に移動する移動体(自動運転車、ドローン、空飛ぶ車など)が効率的かつ安全に移動できる空間やインフラ、ルールの整備を関係各所と進めています。これまでの移動ルートは、道路や航空機の空路など予め決められた静的なものでした。これに対し、出発地点と到着地点を結ぶ空間の移動ルートを時々の環境や状況の変化に合わせてリアルタイムに構築し、自律移動体において最も効率的かつ安全な移動を実現するのが「クラウドモビリティ構想」です。
このクラウドモビリティ構想を実現するにあたって、解決すべき課題が2つあります。
1つ目は、新たなインフラやルールの必要性です。私たちが日々使用している自動車は、250年程前に誕生してから現在まで、人が運転する事、人が歩いている道を走る事を前提に、インフラやルールが整備されてきました。そして現在、自動車の自動運転技術は日々進歩し、人が運転しなくても正確に走行、移動できる状況まで来ています。しかし、実社会で自動運転車を運用するためには、旧来の自動車向けのインフラやルールを自動運転車に対しても最適化する必要があります。
また、航空機が日々飛行している空の世界では、離着陸(地上)から安定飛行を行うまでの低い空域においてはインフラやルールが十分に整っていないのが現状です(高い空域では固定ルールを自動航行)。
2つ目は、自律移動体の管理・制御システムの在り方の課題です。現在の自律移動体にも搭載されているIoTデバイスの大半は、中央集権型のサーバ-システムで制御・管理が行われています。しかし今後、人口を越える数の自律移動体が活躍する社会においては、中央集権型での制御・管理ではコンピュータのパワーやスピード、セキュリティの面において課題が生じます。
私たちは、これらの課題を解決するため、空間を最適なグリッドに分解し、自律移動体とインフラをブロックチェーンで繋げ、分散処理をしながら数多の自律移動体が効率的かつ安全に移動するクラウドモビリティのための最適解を導き出す研究に日々取り組んでいます。
さらに、ドローン離発着のインフラとなるドローンポートシステムの開発とともに、ポートの国際標準化(ISO/TC20/SC17)の規格づくりにも取り組んでおり、自律移動体を取り巻くインフラやルールを標準化することで、新しいモビリティの世界を創っていきたいと考えています。
誰もが気軽で快適に、かつ安全に移動できる社会を実現する、ブルーイノベーションのクラウドモビリティ構想に、どうぞご期待ください。
プロフィール
2011年4月に富士ソフト株式会社を経てブルーイノベーションに入社。2017年3月より現職。複数のドローン・ロボットを制御・管理する「Blue Earth Platform(BEP)」をはじめ、開発全般の指揮をとる傍ら、航空関連規格の国際標準化に向け、ISO(国際標準化機構)においてSC16(無人航空機システム)エキスパート、SC17(空港インフラ)エキスパートおよびvertiport(垂直離着陸用飛行場)のプロジェクトリーダーを務める。東京理科大学理工学部物理学科卒業。