2030 年、ブルーイノベーションの「クラウドモビリティ構想」が自律分散型社会を支える|前編|

2022/10/1

代表取締役社長 熊田 貴之

――ブルーイノベーションが目指す世界とは?

いま世界では、これまでの都心部に集中したまちづくりから、地域へ分散するまちづくり「スーパーシティ」への移行がはじまっています。当社は、2030年ビジョンとして「世界が自律分散型社会へとパラダイムシフトすることを予見して、当社のBEPを自律分散型システムへと拡張し、新しい世界の社会インフラを支えるリーディングカンパニーになること」を掲げて事業を行っています。
具体的には、BEPはドローン、ロボット、AGV等の新しいデバイスを繋ぐシステムのインフラとなり、スーパーシティのインフラである都市OSと繋がり、さらに都市OS上の建物OS、交通網OS等と繋がり各種ソリューションを提供し、スマートなまちづくりに貢献していく計画です。BEPによって管理制御された無数のドローンや空飛ぶクルマが私達の頭上を飛び回り、人々の移動や物流をはじめ、さまざまな事が現在とは大きく変化していることでしょう。

――自律分散型の社会を実現するために必要なことは?

ドローンやロボットなどのハードや、それらを制御システムといった「技術開発」に加え、それらを利活用するための「法規制・規格整備」と「人材育成」の3つが必要です。
自動車が250年前に発明されてから“地上のルール”が構築されてきたように、ドローンや空飛ぶクルマが飛び回る空の世界にも、事故やトラブルを防ぐために“空のルール”を定める必要があります。
その点、我々ブルーイノベーションは、これまでも、そして現在も、日本国内の“空のルール”づくりに大きく貢献していると自負しています。当社が設立に関わった、日本の無人航空機を含む次世代移動システム産業の振興を目的として活動する「一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)」が策定したドローンの安全ガイドラインは空の法改正の土台になり、また、当社は国土交通省と二人三脚でドローンの離発着ポイントである物流用ドローンポートの開発を進めている関係から、2019年にJUIDAが空の「物流ガイドライン」を発表し、それも現在の国の指針の1つとなっています。

さらにJUIDAでは、無人航空機の運航の安全性・信頼性を高めていくためには、操縦士や安全運航管理者の養成が何よりも重要と考え、2015年10月に日本で初めてとなる無人航空機の操縦士および安全運航管理者養成スクールの認定制度をスタートしました。以来、JUIDAとJUIDA認定スクールでは、無人航空機産業の健全な発展のために、無人航空機運航上の安全に関わる知識と、高い操縦技能を有する人材の養成を行っています。

――「技術開発」に関する取り組みは?

「技術開発」に関しても、当社はドローンやロボット活用業務に必要な機能・情報をワンストップで提供するデバイス統合プラットフォームである「Blue Earth Platform(BEP)」を自社で開発・提供し、日本そして世界における自律分散型社会のインフラを支えるロボット・システムのプラットフォーマーになることを目指しています。
既にBEPは、さまざまなシーンで活躍をしています。たとえば、社会インフラの点検です。発電所などの内部点検を行う際は、以前は全て人が確認しなければならなかったため、コストと期間を割いて準備をし、高所や狭所における点検作業などのリスクがありましたが、現在はBEPによるドローン点検が可能になっています。さらに、社会インフラの点検に限らず、教育、オフィス、物流など、さまざまなシーンでBEPが活用されるようになっています。

――2030年に向けてBEPがプラットフォーマーになるためのポイントは?

最大のポイントは、2025年に開催される予定の「大阪・関西万博」でしょう。ここで世界に向けてBEPの存在をアピールし、日本国内だけではなく、世界へも販路を拡大していき、「ドローンやロボットのプラットフォームと言えばBEP」という状況を築いていきます。

――無数のドローンやロボットが稼働する時代に、人に求められる役割は?

2030年にBEPは日本、そして世界におけるプラットフォームとなり、ドローンや空飛ぶクルマが自由に空を飛び回っているでしょう。このような話をするときに「ロボットが人の仕事を奪う」というネガティブな意見がありますが、私は決してそうは思っていません。
社会インフラの点検をドローンが行うようになったことで、人はリスクを避けて、その分をアイデアの想像に使うことができるようになりました。ロボットやドローンの活用は人にさまざまなメリットをもたらします。そして、何よりも、その世界を実現した出発点は“人”の発想であり、最終的なチェックや稼働など根幹を握っているのが“人”であることも変わりはないのです。
私は2030年以降にも大きな夢を抱いています。それは、地球上だけでなく、仮想現実である「メタバース」の世界や、「宇宙」でBEPを活用することです―― これについては、また別の機会にゆっくりお話したいと思います。

代表取締役社長 熊田 貴之

プロフィール

2012年6月ブルーイノベーション代表取締役社長に就任。2004年、世界初となる「海岸地形と底質粒径の変化が予測できる数値計算モデル」を開発し海岸環境コンサルティング事業を立ち上げる。日本初となるドローンによる海岸モニタリングシステムを開発。現在は、複数のドローンやロボットを遠隔・目視外で自動制御・連携させる独自のプラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」を軸とするDXソリューションを、石油化学や製鉄、通信、電力、建設・土木分野に幅広く提供。日本大学大学院理工学研究科博士課程修了(博士(工学))。

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