災害に備える”ドローン防災”とは

2025/1/17

近年、日本列島は多くの自然災害に見舞われています。地震や豪雨など、予測できない自然災害に対して危機意識が高まる中で、災害対応における新たな強力なツールとして「ドローン」が注目を集めています。迅速な情報収集から孤立した地域への物資輸送、さらには自動で避難呼びかけを行うドローンシステムなど、今まさに進化を遂げつつある「ドローン防災」の最前線を、実際の事例を交えながらご紹介します。

■ 災害時に自治体が直面する課題とは

災害発生時、自治体は迅速かつ適切な対応が求められます。しかし、現場で直面する課題は多岐にわたります。 

①   迅速な初動対応
災害発生直後、いかに早く状況を把握し、初動対応を開始できるかが生死を分けます。しかし、広範囲にわたる被害や通信途絶などの要因で、初期の段階で必要な情報が不足することが多いです。

②   刻一刻と変化する状況把握
災害現場では、状況が絶えず変化し、特に天候や余震、二次災害のリスクも考慮しなければなりません。このような状況下での適切な情報収集が求められます。

③   迅速な情報伝達
災害の情報を住民に迅速に伝達することも大きな課題です。情報伝達の遅れは、対応の遅れに直結し、結果的に被害を拡大させる恐れがあります。

■ 災害時のドローンの有用性とは

ドローンは、これらの課題に対して非常に有効な解決策を提供します。以下の点で災害時の対応を大きく改善する可能性があります。

①   有人機と比べて迅速な初動対応が可能
ドローンは、ヘリコプターなどの有人機よりも迅速に災害現場へ到達し、初動対応をスピーディに行うことができます。これにより、状況把握や初期対応が迅速化されます。

②   人が入りづらい場所や危険な場所にアクセス可能
火災現場や土砂崩れ、洪水などの危険な場所にもドローンなら容易にアクセスでき、状況確認が可能です。

③   陸上輸送や海上輸送が困難な状況でも配送が可能
陸路や海上での交通が途絶えた場合でも、ドローンによる物資の配送が可能です。特に孤立した地域への支援が迅速に行えます。

④   救援者への危険性や二次災害のリスクを低減
ドローンが代わりに危険区域に入ることで、救援者の生命を守ることができます。また、二次災害のリスクを低減することができます。

⑤   低空飛行と高解像度映像で状況把握
ドローンは低空飛行を行い、高精度な映像を提供するため、被災地の詳細な状況を把握できます。これにより、対応策が精緻化されます。

⑥   3次元測量も可能
ドローンは3Dマッピングや地形解析を行うことができ、災害後の状況を立体的に把握できます。これにより、復旧作業等の設計に役立ちます。

■ 災害発生時のドローンの活用事例

ドローンは、災害発生時にどのように活用されているのでしょうか。以下に代表的な活用事例を紹介します。

①   状況把握
ドローンを活用した空撮により、地上からは確認できない広範囲の情報を収集できます。例えば、地震の影響で河川にできた土砂ダムの監視や、橋梁の損傷状況の確認などが行われています。

能登半島地震 土砂ダムの監視(2024年1月)

動画
ドローンポートから自動かつ定期的に発着するドローンにより、地震の影響で河川に出来た土砂ダムの状況を継続的に監視

輪島市街地の橋梁点検(2024年1月)

動画
輪島市街地の橋梁について、桁下や箱桁など目視では確認できない箇所の損傷状況を球体ドローン(ELIOS 3)により確認

②   物資輸送

物資が届きにくい地域や道路が寸断された場所にもドローンを使って必要な物資を届けることができます。特に医療物資や生活必需品が重要な役割を果たします。

都市部におけるドローン等を活用した支援物資輸送(2022年3月)

周辺道路の水没を想定し、荒川に停泊した船舶~豊洲間で支援物資を搭載したドローンが自動離陸・飛行・着陸

大分県 災害用可搬式ドローンポートシステム提供(2021年3月)

位置情報や状況の共有、救援物資のドローン搬送を一元管理し迅速対応を支援

③   避難広報
ドローンに搭載されたスピーカーやカメラを活用し、災害時に避難指示を迅速に伝えることができます。

仙台市 津波避難広報ドローンシステム(2022年10月~)

Jアラートと連動しドローンが自動離着陸・飛行。避難広報と状況撮影を全自動化

千葉・一宮町の津波避難広報ドローンシステム(2025年度運用開始予定)

年間60万人のサーファーが訪れるサーフィンの町。海上にいるサーファーへの迅速な情報伝達が求められている

■ 将来のドローンを活用した防災・減災とは

将来的には、ドローンを活用した防災・減災の取り組みがさらに進化することが期待されています。

①   災害前の防災対策
災害に強いドローンの機体やシステムの開発が必要です。過酷な環境で使用できるドローン技術は、平時にも応用できる可能性があります。

②   災害発生時〜直後の緊急対応
災害発生時には人力が不可欠です。平時とは異なり、危険な場所や困難な状況下での対応が求められるため、ドローン操縦者には高い技術が必要となります。そのため、ドローン操縦者の育成が重要です。さらに、ドローン操縦者だけでなく、自治体職員にもドローンの基本的な知識を持ってもらい、運用に関する相談や指示を出せる体制を整えることが求められます。

③   復旧・復興期
現在のドローン技術の精度をさらに向上させることが必要です。より迅速かつ正確な測量や、保守・点検作業への活用を進めることで、業務の効率化や省人化が進みます。また、近い将来、ドローンやドローンポートによる一対多運航が実現すれば、効率的な災害対応が可能となります。

■ 最後に

ドローンは、災害対応における革新的なツールとして、今後ますます重要な役割を果たすことが期待されます。迅速な情報収集、物資輸送、避難呼びかけなど、ドローンの活用範囲は広がっており、災害発生時の効果的な対応に貢献しています。さらに、将来的には技術の向上と運用体制の整備により、防災・減災の分野でのドローン活用が一層進展するでしょう。

政府は「能登半島地震を踏まえた有効な新技術」を自治体向けにまとめ、その中でドローンについて『事業者と事前に災害協定等を締結しておくと有用』と記しています。

自治体やドローン関連事業者が協力・連携し、ドローンの有効活用に向けた取り組みを進めることが、災害時の迅速かつ的確な対応を可能にする鍵となるでしょう。

 

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