【プロが解説】橋梁点検の課題と新技術をドローン活用事例を交えて紹介
2023/7/21
2014年7月1日、全国の橋梁に対して5年に1回の点検が義務化されました。そのため、点検員の不足や点検品質のばらつきといった、橋梁点検の課題が浮き彫りになり、新しい技術に注目が集まっています。とくにドローンを用いた点検は汎用性が高く、注目されている技術の一つです。
そこで今回は、橋梁点検の基礎知識やドローンを使った点検方法を事例も交えて詳しく解説します。ドローン点検を詳しく知りたい方だけでなく、橋梁点検の効率化にお悩みの担当者も必見の内容です。ぜひ最後までお読みください。
− この記事の目次 −
橋梁点検とは
- 橋梁点検をなぜ行うのか
- 具体的にどのように点検するのか
- 橋梁点検の課題
橋梁点検を行うための新技術
- ドローンによる橋梁点検
- ロボットカメラによる橋梁点検
- たわみセンサーによる橋梁点検
ドローンを使った橋梁点検を解説
- メリット、デメリット
- 活用事例1. ドローンを利用した橋梁の事前調査
- 活用事例2. 小型ドローンによる狭小部の点検
- 活用事例3. 非GPS環境対応型ドローンを用いた自律飛行によるひび割れ検査
橋梁点検ならブルーイノベーションにお任せください
- 国土交通省「点検支援技術性能カタログ」に掲載
- 橋梁点検に最適な機体「ELIOS 3」の紹介
- ドローン点検ソリューションの紹介
橋梁点検とは
橋梁点検は、交通路として重要な橋の安全性を維持するために行います。老朽化による崩落事故を防ぐためには必須です。ここでは、橋梁点検における目的や内容・課題を詳しく解説します。新技術の効果を理解するためにも、しっかりと把握しましょう。
橋梁点検をなぜ行うのか
橋梁点検の目的は、劣化による橋の異常を早期発見し、必要な処置を適切に判断できるようにすることです。橋には車両や鉄道などの重量物が通過するたびに負荷がかかり、風化とともに劣化が進行していきます。
構造物に損傷が発生すると、重量物に耐えられなくなり非常に危険です。そのため、事故が起こる前に点検・補修する予防保全の重要性が再認識されています。
具体的にどのように点検するのか
橋梁点検は以下の5ステップで実施します。
1. 事前調査・事前踏査
2. 点検準備
3. 点検実施
4. スケッチや図・写真の整理
5. 健全性診断
点検自体は主に目視検査で行います。遠くから全体をチェックした後に近接目視(手の届く範囲まで近づいて目視検査)や打診棒でたたくことにより詳細な状態を確認します。
主な確認内容は以下の通りです。
● 橋梁路面の変形
● 路上設備のズレや破損
● 側面から見たときの変形
● 橋桁下の損傷や変形
チェックする部材のほとんどは、コンクリートや鋼部材です。コンクリートであればひび割れや剥離・鉄筋の腐食を確認します。鋼部材は、損傷や亀裂・腐食の状態確認が必要です。サイズや幅・深さを計測可能なものは測定し、位置と共に記録します。
点検後の診断で橋の状態をランク分けし、措置が必要かどうかを判断します。
橋梁点検の課題
課題は大きく分けて3つあります。
● 多くの橋梁を点検するための人的リソース不足
● 定期点検にかかる費用を賄う予算不足
● 多種多様な橋梁や見えない部分を点検するための技術力不足
点検を実施する人員不足
定期点検が必要な橋梁は約72万橋もあり、全国的に人員が不足しています。すべての箇所において近接目視によるチェックが必要なため、点検に時間がかかるのも要因です。
点検にかかる予算不足
国土交通省の調査では、約8割の自治体が予算確保や費用面で負担を感じています。なかには点検計画を立てても、予算が確保できずに実施できない自治体もあるほどです。
人が簡単に近づけない点検箇所が多いことも橋梁点検の費用を増大させています。足場の設置や専門性の高いロープアクセスという手法は、同じ検査範囲の比較で点検車の約10〜15倍の費用が必要です。
点検員の技術力不足
技術者の技量の差による点検品質のばらつきも深刻な課題です。多種多様な構造の橋梁における点検には、設計や施工に関する幅広い知識と問題があるかどうかを見極める能力が求められます。
ノウハウを受け継いでいく必要がありますが、こうした知識や経験は体系化されておらず、ベテランの退職に伴い技術が失われてしまうことも問題になっています。
橋梁点検を行うための新技術
橋梁点検におけるこうした課題を解決するため、新しい技術に期待が寄せられています。
注目されている新技術を紹介します。
ドローンによる橋梁点検
ドローンは小型で安定した飛行が可能で、足場を組んだりロープアクセスでないと近づいて点検することが難しい箇所も、遠隔操作で対応できます。そのため点検のための準備や点検に要する時間は作業員が目視する場合に比較して非常に短くて済みます。光学ズーム機能を備えた高精細なカメラを搭載することで目視と遜色ないレベルで点検できるほか、赤外線カメラによる点検も可能です。映像はリアルタイムに送信され、複数の作業員による点検も容易です。
画像処理技術やAIを組み合わせることで、オルソ画像化や3Dモデル化も可能で、撮影した画像の解析や点検帳票の作成を自動化する技術も実用化されています。暗黙知がルール化されることで、点検品質のばらつきを抑える効果もあります。
ロボットカメラによる橋梁点検
ロボットカメラは、専用カメラを自在に伸縮可能なポールの先端に取り付けた装置です。カメラの向きや映像の倍率を操作して、高所や橋桁の下部を安全な場所から確認するために使います。
近接目視と同等の精度があるため、現地で目視確認ができます。小型・軽量のため、足場のよくない場所にも運搬、および設置が可能です。
たわみセンサーによる橋梁点検
たわみセンサーによる橋梁点検は、センサーを置くだけで橋の劣化具合を診断できる画期的な技術です。劣化が進むほど構造のたわみが大きくなる特性を利用しています。
従来の計測作業では、足場の設置や関連機関との調整に膨大な時間を要していました。しかし、センサー設置によるモニタリング技術が実現したことで大幅な時間短縮を実現しています。短期間で多くの橋を測定できるため、詳細な点検や補修が必要なものがすぐに分かるようになり、点検業務の全体最適化も見込めます。
ドローンを使った橋梁点検を解説
ドローンとカメラを組み合わせた点検は、汎用性の高い技術として注目されています。ここでは、ドローン点検について詳しく解説していきます。
メリット、デメリット
ドローン点検のメリットは以下の3つです。
● 人手や予算不足の解消
● 点検品質の安定
● 安全性の確保
危険な高所作業やアクセスしにくい場所にも空中から近づけるため、遠隔操作で目視確認と同等の画像や映像を取得できます。点検前の準備や安全確保も迅速にできるため、工程全体の時間を短縮可能です。橋梁点検車が不要になることで、交通規制にかかる費用も抑えられます。
一方でデメリットは以下の3つです。
● 打音や打診棒による点検ができない
● 法律により飛行できない場所がある
● 天候の影響を受けやすい
画像や映像による診断しかできないため、直接触れることによる点検はできません。ドローンの飛行には法律による規制があり、飛行禁止区域や、風が強いときには飛行できない場合があります。
活用事例1. ドローンを利用した橋梁の事前調査
橋梁点検だけでなく点検前の現地調査にもドローンが活用されています。点検を実施するには、綿密な計画を立てたり、関係機関との協議資料を作成したりする必要があり、事前調査が欠かせません。
しかし、なかには点検車が入れない場所にある橋など、調査できないケースがありました。そこでドローンによる概観確認を採用したところ、それまで事前調査ができなかった橋梁における計画立案が可能になり、点検効率が向上しました。
活用事例2. 小型ドローンによる狭小部の点検
橋や高架下には点検車のゴンドラでは近づけない箇所があります。そうしたところの点検に小型ドローンが活用されています。
橋に対して鋼材が斜めに設置されている部分だけでなく、入り組んだ場所にある台座部分も点検可能です。人が入れるかどうかを事前に調べる必要がなくなる上に、交通規制も不要になることからコストダウンにもつながっています。
活用事例3. 非GPS環境対応型ドローンを用いた自律飛行によるひび割れ検査
コンクリート製の高橋脚を近接目視で点検する場合、高所作業の危険や損傷部を見落とすリスクがあります。
しかし、非GPS環境対応型ドローンであれば、安全で高精度な検査が実現します。ドローンで3次元モデルを生成し、その範囲内を自律飛行できるシステムを採用しているからです。規則的に撮影できるため、点検漏れや見落としも防止できます。
橋梁点検ならブルーイノベーションにお任せください
ブルーイノベーションは、独自のデバイス統合プラットフォームを軸に、プラントや発電所など国内外200カ所以上でドローンやロボットの導入をサポートしています。
ブルーイノベーションのドローンを活用した点検ソリューションを紹介します。
国土交通省「点検支援技術性能カタログ」に掲載
弊社のドローンを活用した橋梁点検技術が、国土交通省「点検支援技術性能カタログ」に掲載されています。
点検支援技術性能カタログとは、国管理施設で技術を検証した結果をまとめたものです。直轄国道の橋梁においては、2023年度から一部項目への点検支援技術の活用を原則化しており、基本的にはカタログ内の技術を選定する必要があります。
橋梁へのドローン点検活用を検討される際には「点検支援技術性能カタログ」の実験結果もぜひ参考にしてください。
【技術名・技術番号】
ドローンを活用した橋梁点検技術(ELIOS3)|技術番号 BR010060-V0023
橋梁点検に最適な点検ドローン「ELIOS 3」の紹介
ELIOS 3は、最新の技術を適用した「空飛ぶデータ収集デバイス」です。安定飛行を可能にする最新のSLAM技術により、桁下等のGPSが届かない場所でもパイロットの操縦負担を軽減します。球体ガードと衝突耐性があるため、狭い場所でも安心して飛行可能です。
「ELIOS 3」を活用した橋梁点検技術
・ELIOS 3の最新のSLAM 技術の活用によって、桁下や箱桁などGPSの効かない環境でも安定して飛行できます。
・球体ガードと衝突耐性があるため、狭隘部に入り込んでの撮影が可能です。
・上下180°チルト可能なカメラを搭載しており、床版の天面等の撮影ができます。
・照度16,000ルーメンのLEDライトにより、暗所での撮影が可能です。
・LiDAR(3Dスキャナー)によるリアルタイムマッピングと専用のソフトウェアにより、ひび割れ等不具合箇所の位置特定が可能です。
詳しい技術内容に関しては「ELIOS 3 紹介ページ」のフォームからお問い合わせください。
ドローン点検ソリューションの紹介
ブルーイノベーションのドローン点検技術は、以下のようにさまざまな分野に対応しています。
● タンク
● 施設外壁
● 煙突
● 屋根
● 送電線
● 橋梁
工場や設備の点検における安全性や品質の向上、および効率化にお悩みの方は「ドローン点検・測量|屋外の紹介ページ」をぜひご一読ください。
なお、今なら「自社でできるドローン点検導入の3ステップ」を解説した資料も無料で配布しています。こちらもぜひお役立てください。
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