人とドローンが協業する、デジタル発電所の実現に向け、 まずは自分たちでやってみる。
2021/8/4
株式会社JERA 様
国内最大の発電会社である株式会社JERA(以下、JERA)は、ドローンによる発電所の設備点検を自社パイロットが担っています。ドローンを用いた点検業務は専門業者に委託する企業が少なくない中、JERAが自社パイロットによる点検にこだわる理由がありました。
すべては課題の認識から
JERAは、2020年10月に火力発電所の運営業務をデジタル技術で変革させるため、「デジタル発電所」ビジョンを公表しました。
デジタル発電所はJERAが発電設備の運用で取り入れている「Kaizen力」と「技術力」に、「デジタル化」を掛け合わせることで新たな価値を創造していくものです。発電所のドローンによる設備点検は、「デジタル発電所」ビジョンの取り組みの1つになります。
石炭火力発電所の主要設備であるボイラは数年に一度、法定点検が行われます。この点検では、高所点検のための足場の設置と解体にそれぞれ20日前後かかります。さらに、足場の設置には部材の費用だけでなく、設置に伴う人件費も必要になります。点検作業の簡略化や時間の短縮により費用を抑制することは、発電所の課題として認識され、デジタル発電所の実現を目指すきっかけとなりました。
安全で効率的な「ドローン点検」の確立へ
「デジタル発電所を目指すにあたり、点検する作業員の安全確保と作業効率から、比較的早い段階でドローンによる点検を検討していました。しかし、最初に課題となったのが法的な制約です。発電施設の法定点検では、人による直接目視が義務付けられていました。ドローンを使用するためには、ドローンで撮影した映像の確認方法が、目視での点検と同等であると認められる必要があります。映像を関係省庁に持ち込み、多岐にわたる検証を重ねた結果、ドローンによる映像確認が、目視と同等の点検として認められました。」
(株式会社JERA エンジニアリング本部 O&M・エンジニアリング戦略部 東日本O&M・エンジニアリング計画部 Kaizen推進センター Kaizen革新ユニット 岡田 博幸 氏)
ドローン点検の実用化にはほかにも制約がありました。
「鉄に囲まれたボイラ内部はGPSの信号が届きません。また、効率的に燃料を燃焼させるための通気口が多数あり、常に風が吹き込んでいます。ドローンの飛行には困難な環境であり、パイロットには大きな負担がかかります。デジタル発電所は、全社で進めていた「Kaizen」の一環でスタートしましたが、生産性向上に向けて、ドローンが必要な作業を考え抜きました。ドローンによる点検作業の負担が大きくなってしまうと、導入する意義が薄れてしまうため、実際には、ドローンではない別の方法も検討しました。そのころに出会ったのがELIOSでした。ELIOSであれば、ドローンに搭載された明るい照明とFPVで、これまで点検が困難だった場所も容易に点検することができ、万が一墜落したとしてもガードに囲われているため、設備だけでなくドローンも傷つけません。パイロットの負担がこれまでの数十分の一に減ったのですから、これまでのドローンにはなかなか戻れません。また、ガードがあるため設備に密着させての撮影も可能となり、目視点検と比べても遜色なく、詳細まで確認することができます。」(岡田氏)
パイロットが足りない
「ドローンを導入すると作業効率は飛躍的に改善しました。そのため、JERAの各発電所からも“ドローンで点検したい”というリクエストが増えてきました。しかし今度は、パイロットが足りず対応できないという課題がでてきました。課題解決に向けて検討を重ねた結果、適性を持った社員に対し、教育訓練を進めていくことになりました。JERAの人財開発センターがパイロットに必要なスキルを見える化し、カリキュラムを策定しました。今年(2021年)の4月に第一回となる座学研修(初級編)を開催しました。今後は各現場で10時間の飛行訓練を進め、さらに難易度の高い実技訓練も予定しています。」(株式会社JERA エンジニアリング本部 国内技術サービス部 事業管理ユニット ユニット長 中神 和香 氏)
JERAはドローン点検を自社パイロットで担っています。専門業者に委託するケースも多い中でJERAが手間のかかる自社運用を貫いているのは、デジタル発電所を実現するため、Kaizenや創意工夫に必要な知見を社内に蓄積したいという考えがあるからです。
「もともとKaizenには、いかに内製化するか?というテーマがある上、“まずは自分たちでやってみる”というJERAのスタイルもあります。自分たちがノウハウを習得して、社員に伝えていくというスタンスです。もし外部に委託するとしても、自分たちがその方法や技術を理解し運用した経験を持たなければ、本当の意味で自社の設備を保全することはできないと考えています。」(岡田氏)
「ドローンは今後さらに自動化が進み、人が飛ばさなくても巡視や点検が出来るようになると思います。ですが今は人が操作し、ノウハウやデータを蓄積していく時期であり、それらがいずれJERAの大きな財産になると考えています。そのために、JERAでは自社でパイロットを育成しているのです。」(中神 氏)
人とドローンが協業する、デジタル発電所の実現に向けて
JERAが目指すドローン点検とはどのようなものなのか、最後にお聞きしました。
「ELIOSを活用した設備点検をJERAの国内全ての火力発電所に展開し、点検の効率化を図りたいと考えています。JERAが目指しているデジタル発電所の将来像においては、日常的な巡視パトロールを行っているドローンが、震災などの緊急時には発電所全体を自動で臨時点検すること、ドローンの撮影映像で不具合箇所を自動判定し予知保全に活用することなどを想定しています。ルーチンワークや危険が伴う業務はドローンやロボットに任せ、私たち人は、安全の確保と新たなアイデアを創出する時間を確保する。デジタル発電所におけるドローン点検の導入は、働き方改革でもあるのです。」(中神氏)
COMPANY PROFILE
株式会社JERA
本社所在地 | 〒103-6125 東京都中央区日本橋2丁目5番1号 日本橋髙島屋三井ビルディング25階 |
---|---|
設立年 | 2015年4月30日 |
従業員数 | 約4,500名(2021年4月1日時点) |
URL | https://www.jera.co.jp/ |
事業内容 | 火力発電事業 再生可能エネルギー事業 ガス・LNG事業 上記各事業に関するエンジニアリング、コンサルティング など |
この事例で使用した製品・ソリューション
工場・プラント施設点検用 球体ドローン「ELIOS 2」
自社でもできる!工場・プラント施設 点検用ドローン サブスクサービス
ホワイトペーパー ダウンロード
この事例に関するお問合せ・ご相談
ブルーイノベーション株式会社
TEL.03-6801-8781/FAX.03-6801-8782
【お問い合わせフォーム】
https://www.blue-i.co.jp/contact/project/